突然変異
ここにいるのは、突然変異の人だから……
会議の中で、課長がそう言った。
ここにいる人を基準にしない方がいい、と。
突然変異?
はて? 私は、そこに含まれているのだろうか?
今日の会議は、いつもの定例会議とはちょっと違うものだった。
新しいことをやろうと、かっこよく言えばプロジェクトチームを作りましょう、的な感じ。
メンバーは、課長に所長、進行は支店長。
いやいや、私、ここに居ていいんですか? という中に私は居た。
ときどき、私は仕事中に外に出る。
内勤の人なので、基本は出ない。
それでも、出る。
決して、サボっているわけではない。
まぁ、なんだか、いろんな流れがあり、あるコンテンツは私が作った、ということになっている。それを使うために外に出る。
そのコンテンツは、最初は会議体から出たものなのだが、会社内では、私のものということになっている。
とてもありがたいことだし、それによって私はとてもいい経験をさせていただいている。
今日の会議は、そのようなコンテンツを更に作れないか。
そして、もっと他の人に広げられないか。
基本的な趣旨は、そんな感じ。
ただ、できている道を進んでいくわけではなく、これから道を作りましょう。
といったものだったので、私はついていくので精一杯だった。
地図の作り方もわからないし、方位磁石とかそんなものがあるわけじゃない。
どっちに進んでいいのやら、そもそも進む力が私にあるかどうかもわからない。
私の持っているコンテンツは、しっかりお膳立てをしてもらった上で、披露している。
自分の力は、本当に微々たるものだ。
評価してもらっているのは嬉しい。
だから、ここに呼ばれているのだろうけど、過大評価のような気がしてならない。
あぁ、いろいろやんなきゃいけないのか。
仕事に時間を取られたら、趣味の時間がなくなってしまうなぁ。
ライティングだって、カメラだって、他にももっともっとやりたいことあるんだけどなぁ。
そんなことを考えていたら……
「二兎追うものは一兎も得ないかもしれないけれども、全兎を追えば、すべてを得られる」
そんなことを言っている人がいた。
そんな、バカなこと言って。
そう思えれば、いいのに。
おぉ! なるほど!
と、思ってしまった。
進んだら苦しいはずなのに、なんだかワクワクしているのだ。
そんな楽しそうなこと、誰の手にも渡したくない。
両手からこぼれ落ちるくらいの、いろいろなことをやってみたくて仕方ない。
そして、きっとできるはずだと思っている。
やっぱり私は、突然変異のような、ちょっとおかしい人なのかもしれない。
まぁ、そういうことにしておこう。