名古屋では雪が降っていないけれど、
雪が見たい。
冬になると、そう思う。
ハラハラと舞いながら落ちる雪。
しんしんと音もなく積もっていく雪。
白い景色に青い空。
雪が降ると、どこか違う世界に迷い込んでしまったのではないかと思うくらい、いつも見ている風景が変化する。
降っている景色も、積もった景色も、見ていて飽きない。
今日は関東では、すごい雪らしい。
名古屋では、明後日くらいに降るらしい。
名古屋では、雪はそんなに降らない。
ひと冬に、積もる雪が降るときもあるし、降らないときもあるし……と、そんな感じ。
降って積もってしまうと、大変。
10年以上前のこと。
「今日、何時に帰れるんだろう?」
「いやー、もう帰れないんじゃないの?」
外は真っ暗なのに、いつもより明るく感じる。
病院さんを回って、検査をする血液を持って帰ってくる人たちを
いつもより静かな会社の中で待っていた。
やることもないので、ずっと降り続けている雪を見ている。
いつもなら、とっくに帰ってきている人たちが帰ってこない。
昼間も、遅れる人が続出していた。
18時くらいに帰ってこないといけない人が、24時に帰ってきた。
名古屋市内から1時間もかからないはずなのに、6時間もかかるなんて、笑うしかない。
内勤の人も、ほとんど帰ってしまった。
私はなぜか、居残って最後まで業務をやっていくことになった。
何時間も渋滞に巻き込まれて、いつになったら帰れるのか。
携帯の充電もなくなり、トイレに寄るのも躊躇われる。
なんて日に、仕事になってしまったんだろう、と嘆く人も多かったと思う。
けれど、私は、そんな非常事態にワクワクしていた。
滅多に体験できないような、貴重なこと。
椅子を3つくらいつなげて、仮眠を取るベッド代わりにしてみたり
買い出しで買ってきてもらったおにぎりを深夜に頬張ったり
普段、あまりおしゃべりしないような先輩といろいろ話ができたり。
ずっと帰れなくて、ほぼ徹夜状態だったし
早朝に帰ろうと思ったら、車に雪がすっごい積もってたし
帰り道にある橋が、バッキバキに凍っていて怖かったし
いろいろ大変だったけれど、
何年も経った今では、語り継がれるような笑い話になった。
大変なことは、日常でいっぱい起きるけれど、
どんな大変なことでも楽しみたいなーって思う。
日常がキラキラしていたら、人生がずっとキラキラすることになるから。
きっと明日は、都心で雪が降って大変だった、ってニュースがたくさん流れるだろうし
本当に帰れなくて、大変な目に遭う人もたくさんいると思うけど
「雪が降って、こんな面白いことがあってね」って話が聞きたいなーって思う。
雪が降ったら、どんな写真を撮ろうかと、どんな記事を書こうかと、
ひたすらワクワクしている。