バリアが溶けるとき
「ひろみさん」
と、呼ばれるとちょっと戸惑うことがある。
そんなに気にすることではないのかもしれない。
それでも気になって、戸惑ってしまう。
会社などで、毎日会っている人は、自然と呼び名が決まってくる。
まぁ、仕事ってこともあるけれど、名字に「さん」付けで呼ぶのが自然。
部署内に限っては、名前で呼ぶこともあるし、ニックネームで呼ぶこともある。
ちなみに、私は「松下さん」「まっちゃん」「広美ちゃん」って呼ばれている。
プライベートでは「姐さん」という呼び名が加わる。
何度も会って、遊んで親しくなっていくうちに呼び名が変わるのは何の違和感もないし、戸惑わない。
どうぞどうぞ、好きなように呼んでください、と思う。
戸惑うのは、そんなに会ったことないし喋ったこともないのに、いきなり下の名前で呼ばれることだ。
いや、私、そう呼んでいいって言いましたっけ?
と、おもわずツッコミを入れたくなる。
特に男性に名前で呼ばれると、ビクつく。
親しげにされているので、喜ぶ場面なのかもしれないが、正直なところ、守りの姿勢に入り、逆に壁ができる。
あ、でも、呼び名ってわけでもないのか。
そもそも、私は人見知りである。
相手に対して、どう接していいか、距離を測ってからじゃないと近づけない。
いろいろな人に会うようになってから、距離を測る時間が短くてすむようにはなってきているが、急に自分のテリトリーに入られると、どうしていいかわからなくなる。
あくまで、私から近づくことができないと、わたわたする。
だ る ま さ ん が こ ろ ん だ
って、一歩ずつ近づいているうちはいい。
だるまさんがころんだ!
って、急に距離を縮められて、振り返ったらすぐ目の前にいた、なんてことがあったら「ひゃー」ってなってしまう。
なんか、ときどきいるんですよ。
「どーぞー」って言ってもいないのに、玄関をバーンって開けて、土足で上がりこんで、その上、座り込むヒト。
せめて「おじゃまします」って言ってよ。
せめて玄関を静かに開けてよ。
せめて靴くらい脱いでよ。
まぁ、いろいろ思うわけでございます。
そうやって「バーリア!」って作っているので、なかなか近づけないこともあるんですが、バリアが溶けるときもあるんです。
お酒を飲んでるとき。
ときどき、やらかすんですよ。
バリアを緩めすぎて、へらへらってなること。
そして、後で猛烈に後悔すること。
あぁ、気を緩めすぎた……って。
それでもまた飲んでしまう。
そして、ゆるゆるっとなってしまう。
お酒とは、上手に付き合いましょう。
と、自分に言い聞かせてみる、そんな春の日。