ご趣味について。

※冒頭の話はフィクションです

 

 

「ご、ご趣味は、なんですか?」

「えっ、あ、はい。えーっと……」

しまった。

目の前の男の、髪の毛の生え際がどうなっているのかが気になりすぎて、会話が疎かになっていた。会話に詰まったように思われたのだろうか。

たぶん、おでこの辺りを隠したいから、前髪をおろしているんだろうけど、そのおろしている前髪が寂しくて、エアコンのちょっとした風でふわふわーって揺れるもんだから、余計に気になるんだよねー。いっそのこと、短くしちゃえばいいのに。

それにしても、ご趣味って。

 

カコーン

 

「旅行ですかねー」

ししおどしって、本当にあるんだ。

「りょ、旅行って、どちらへ行かれたことがあるんですかっ?」

食いついてきたな。

どちらって、いろいろだけどねー。

こういうとき、無難な場所ってどこなんだろう?

ひとりで北欧に1ヶ月くらい行ってきた、なんて言ったらどんな反応するんだろう?

 

「この前は、九州に、行ってきました」

「あ、九州ですか!? 自分も、行ったことあります! 博多の屋台のラーメンは美味しかったなー。天満宮も行きましたよ!」

あー、はいはい。

九州=博多、って感じよね。

私が行ったのは鹿児島だけどね。

屋久島は、ホントよかったなー。あの自然は癒やされる。

 

カコーン

 

 

……と、まあ、深夜にそんな場面を思い浮かべてしまったのです。

いや、趣味って、なんだろうなーって考えてたら、そんな場面だったわけです。

 

ご趣味は?

なんてセリフ、今どきあるかー? って思うのですが、もし、もしですよ、お見合いでもすることになったら、必要じゃないですか?

ししおどしのあるような料亭でお見合いすることはないにせよ、お見合いで趣味を聞かれることはあるかもしれないんですよ!

 

実際、聞かれました。

実際のお見合いとか、お見合いパーティーとか。

それなりに、真剣に婚活をしていたこともあるので。

 

まず、何か共通点がないかって探るんですよね。

だって、なに話していいか、わからないんですよ。初対面の人を相手に。

そこで、趣味は? ということになるわけです。

 

趣味は? って聞かれたら、どう答えようか迷います。

 

旅行。

旅は行く方だと思いますが、趣味っていうより、もはや日常の延長線。

勝手なイメージなんですが、旅行っていうと、ちゃーんと何処へ行こうとか、何を食べようとか計画して、交通手段も宿もちゃんと確保して……なんだと思うんです。

私の場合は、今度の休みは何しよう? ってところから始まって、そういえば、誘われていたランチ会に行くんだった! って名古屋から樟葉に行ってしまうわけですよ。

移動距離からすると、旅っぽいんです。けど、普通に電車に乗って、本を読んでうたた寝してると着いちゃうんです。旅行に来た! って感じじゃないんですよね、なぜか。

そういえば、今月は毎週のように関西に出没していますねー。

そういえば、明日もうっかり関西出没しますねー。

 

ってことで、趣味で旅行は却下。

 

ライティング。

最近、ハマっていることといえば、やっぱりこれ。

文章を書くことですね。

始めたきっかけは、趣味にでもできたらいいなーって、そんなふうに思っていたんです。だから、趣味、といえるのかも。

あー、でもダメだ。

趣味にはできない。

だって、ハマりすぎている。

いや、だって、よく考えたら、おかしいですもん、私。

2016年の12月から始めて、通常クラスの4ヶ月の講座を2期受けて、上のクラスの3ヶ月の講座を3期受けて、来月から4期目を受けようとしている。

いや、絶対おかしいって。

ちょっと、本気になりすぎてる。

趣味でやってますー、なんて甘いこと言ってらんないな、ってところまできちゃってます。

今年の目標が「書くことでお金をもらえるようになること」なので。

 

マジすぎるので、趣味でライティングは却下。

 

カメラ。

あー、これがいいかも!

写真の世界を知れば知るほど、面白くなってるんです。

ボケ感のある写真が撮りたくて、一眼レフを買って、めっちゃ満足して。

で、ポートレートが面白いなーって思い始めて、講座でモデルさんを撮らせてもらって、アドレナリンが出まくり。他の人が撮った写真を見せてもらって、「かわいー」って叫びながら、自分のカメラではどんなふうに撮ったらいいのか悩む。

マニュアルモードを初めてやってみて、わからないことだらけだけど、言われるとおりにやってみると、すごい写真が撮れて、びっくり!

カメラを持って、冒険に出てるような気分になる。

立ち寄るところで、モンスターが出てきて、倒すのはすごーく大変でも、倒すことができるとレベルアップする。レベルアップしてゲットできた技は、次の戦いに活かされる。

めっちゃRPGじゃん!

 

いや、これもダメじゃん。

却下です、却下。

 

なんか違いますよね?

女子がカメラが趣味だっていったら、「空、撮ってまーす」とか「カワイイ動物、撮ってまーす」とかですよね? きれいな女性のモデルさんに鼻息荒くなりませんよね?

女子が持ってる一眼レフっていっても、宮崎あおいちゃんが持ってる(CMしてる)OLYMPUSのPENですよね? 私が持ってる、SONYのα7Ⅱじゃないですよね?

女子がカメラ売り場で見るのはカワイイストラップとかのアクセサリーですよね? 間違っても、カメラ売り場でレンズ売り場でレンズを眺めてないですよね?

 

あーあーあーあー。

 

趣味って、聞かれたら、どうすればいいんだー!

いやー困る。

 

それなりに、お菓子作ったりしますけど、料理もできないことはないですけど、それって、なんか嫌なんですよねー。

女子力アピール? っていうんですか。

趣味でお菓子つくりまーす、って、ガチで言ってたら、引きます。

私、結構、本気モードで作ります。

今年のバレンタインは、気がついたら、50人分作ってました。

料理は、生きていくために必要なスキルですしね。

 

読書?

いやー、本を読むことが趣味って言ってもねぇ。

なんか、無難すぎませんか?

本って、ジャンルがありすぎて、そのジャンルが合わないとつまんないですよねー。

好きな人にとっては大変申し訳無いですが、歴史小説が苦手です。

学生時代の、歴史嫌いのトラウマが未だにあるみたいなのです。

そして海外の作品も、ちょっと苦手です。

登場人物が覚えられないんです! カタカナばっかで。

ハリーポッター、読むの、苦労しました。

最初、ハリーポッターとロンしか、わからなかったんですから。ハーマイオニーは、後半になって、覚えられました。ダンブルドア校長先生とかも。

 

「読書が趣味なんです。最近は、あまり読めてないんですけどね」

ちょっと、謙遜してみる。

「へー。僕、本は読まないんですよねー」

 

あー、こんなふうに言われたら、業務用の冷凍庫の中に入れられたくらいに凍ります。

読まないって、なんだ!

信じらんない!!

私をここから早く帰して!!!

 

ってなります、たぶん。

 

 

趣味のこと、聞かれたらどうしようかなー。

 

あ、お見合い、するわけじゃないんですけどね。